【観光地の魅力】誰にでも優しい視点を
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興に観光が担う役割は大きい。2年後の東京パラリンピックを見据え、県内の行楽地や観光施設は障害のある人への配慮が行き届いているかを点検し、誰もが快適に旅を楽しめるように努める必要がある。
東京都内で開かれた本県出身者らの会合で、カナダ出身の男性グリズデイル・バリージョシュアさんが講話し、障害のある外国人旅行者をもてなす観光振興策の重要性を訴えた。脳性まひのため4歳のころから車椅子で生活するようになったグリズデイルさんは、若いころから日本に関心を抱き、2007(平成19)年に来日した。車椅子でも生活しやすく人々が親切な日本がすっかり好きになり、2016年に日本国籍を取得した。
グリズデイルさんは首都圏の介護老人福祉施設と幼稚園を運営する会社で日本語ウェブサイト管理業務に携わる一方、3年前にボランティアで海外の障害者に向けた日本の英語情報サイトを立ち上げた。休日に訪れた都内の行楽地の多目的トイレの場所や車椅子でも通りやすい道路案内、ホテルの風呂場の手すりの設置状況、車椅子での電車の乗り方や駅の乗り換え方法などを写真付きで発信している。この取り組みが認められ、今年1月には社会に大きく貢献した人に贈られる「シチズン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。
講話の中でグリズデイルさんは「障害者は旅行する際、事前に行き先の情報を詳しく調べる。行けると思えば介護者を含め複数で出掛け、健常者よりも長期間滞在する傾向が強い」と分析する。「旅を楽しめれば、詳しい情報を広く世界に発信する。そうなれば各国から多くの人が集まってきます」と強調した。
障害のある外国人旅行者が快適に過ごせるまちは、体の不自由な人や高齢者、けがをした人たちにとっても住みやすい地域になることは言うまでもない。誰にでも優しいまちは住民の誇りになり、ふるさとへの愛着も増す。
県内では、県や市町村、民間企業や団体がバリアフリーに取り組んでいる。今後は福祉の充実とともに観光施策の一つとしての見方も大事にしてほしい。グリズデイルさんは「福島にも旅して、障害者にとっての福島の魅力を見つけ、発信してみたい」と語る。東京パラリンピックでは世界各国から多くの人が来日する。福島への誘客を進めるためには、彼のようなボランティアと連携を深めることも重要だ。
出典:福島民報
http://www.minpo.jp/news/detail/2018053152040