日本人は気づかない? 京都で聞いた訪日外国人の「意外」な本音と不満

年間を通じて観光客でにぎわう京都。外国人観光客からの人気も高く、京都市の調査では9割以上が「観光に満足した」と答え、伝統文化や治安の良さ、街の清潔さなどが高い満足度につながっているようだ。一方、およそ6人に1人が「旅行中に残念なことがあった」と回答しており、文化が異なる外国人ならではの不満も少なくない。2年後には年間4千万人の訪日外国人を目標としている日本。外国人客たちの本音に「おもてなし」のヒントが見え隠れする。

◆「街中にごみ箱少ない」

「日本人女性はおしゃれね」。イタリアから初めて来日したコピーライター、バレンティナ・ベラントーネさん(36)は驚いた様子で話す。

日本人女性は、配色や自分の体形にあった服の形などを吟味して流行にあった服装を選んでいる、とし「イタリアや欧米よりもファッションに力を入れている。それに比べて男性は普通だわ」と笑う。

イタリアで人気のある日本ブランドは意外にも「資生堂」だという。「イタリアでは高いのでなかなか買えないけれど、日本で資生堂のシャンプーが安く売っているのにはびっくり。ホテルのアメニティも資生堂だしね」とうれしそうに話す。

一方、「ごみ箱がある場所が駅やコンビニなどに限定されていて、街中に少ないのが不便」と漏らす。イタリアでは、街中の至る所にごみ箱が設置されているという。

日本では「テロ対策など治安上の理由から設置が制限されている」という受け止め方が浸透しており、日本人はあまり不便さを感じていないようだ。

だが、別のイタリア人、レオナルド・ラッツァレンさん(30)も「屋台で食べ物を買っても、包み紙を捨てる場所がないから困るね」とごみ箱の少なさを指摘。日本人とは異なる視点は参考になりそうだ。

◆「バスや地下鉄混みすぎ」

観光客の動向を把握しようと、京都市は観光客数や観光消費額の調査を毎年実施。平成28年は外国人観光客数が約318万人と過去最多を記録した。同年の調査では、回答者1868人のうち、約97%が京都観光に「満足した」と回答。9割近くが「また京都を訪れたい」と答えている。

逆におよそ6人に1人が「観光中に残念なことがあった」と答えた。特に「電車・バスなどの公共交通」に関する不満をあげる人の割合が前年より増加。市バスの混雑や交通網の複雑さに対する苦情が目立った。

街中の混雑に閉口する観光客は少なくない。

「静かな印象があったが、バスや地下鉄も観光客でいっぱいで移動が大変。もう少し落ち着いて観光がしたいわ」。八坂神社(京都市東山区)を背景に写真撮影するフランス人のメラニエ・モーラさん(30)は、訪日前に抱いていたイメージとのギャップに困惑気味だ。

米国から訪れたアンドレッティ・メディーナさん(29)も「公共交通機関は人の多さに息がつまる。キャリーケースを持った乗客がいると通路がふさがれて降りるのも一苦労だよ」と話す。

言語にまつわる不満を挙げる人も。インドネシアから家族と訪れたアディティア・プリマ・プトラさん(29)は「助けを求めて話しかけても、英語が通じない。スマートフォンに翻訳アプリを入れないと会話が成り立たないないこともあった」と訴える。

◆在住外国人からも不満続出

こうした不満は、観光客に限ったことではなさそうだ。京都市内在住歴11年のフィンランド人、ハッカライネン・ニーナさんは、「外国人の私から見ても京都は外国人観光客が多い。特にバスは連日満員で、あまりの人の多さに乗れなかったことも」と嘆く。

友人に「静かな寺社仏閣はどこ」と聞かれることもあるが、「いまの京都は落ち着いて観光できる場所が少なくなっている」と残念がる。

不満を解消しようと、京都市も対策に乗り出している。26年から市内の免税店や宿泊施設向けに、受話器越しに通訳者が対応する多言語電話通訳サービスを開始。英語や中国語など5カ国語に対応しており、利用件数は年々増えているという。29年には計約4千件の利用があった。

また、深刻化する市バスの混雑を緩和するため、40年以上続いてきた「後ろ乗り前降り」を改める。前扉から乗って運賃を先払いし、後扉から下車する「前乗り後ろ降り」方式を今秋から順次導入する。まずは混雑が激しい路線から始める予定だ。

市の担当者は「より快適に京都観光を楽しんでもらえるよう、観光客の不満もすくい上げながら向き合っていきたい」と話している。

出典:産経WEST

https://www.sankei.com/west/news/180606/wst1806060001-n1.html