ムスリム客、どう対応 しょうゆ、みそにも配慮必要 小樽の岡田さんと堺町通りを歩く

イスラム教徒(ムスリム)の多いマレーシアなどから道内への観光客が急増する中、観光業者がムスリムに対応する動きが広がっている。豚肉やアルコールを含まないなど戒律に従った「ハラル食」をとり、礼拝を1日5回行う敬けんなムスリムが求めるもの、避けるものとは―。小樽在住のムスリム、岡田ファラシャーフィックさん(23)と小樽の観光スポット・堺町通りを歩いた。

人口の6割がムスリムとされるマレーシアから道内への観光客は2014年度までの5年間に6倍に増え、昨年も前年比3割増の6万3600人に上った。同じくインドネシアなどからも増えているとみられる。

ムスリムにも、戒律を厳格に守る人から「豚肉を避ければ良い」という人まで個人差がある。厳格な人は、豚肉などを1度載せた食器は使わない。父がパキスタン人の岡田さんはマレーシアの旅行業者らから「『食べ物に困る』という相談をよく受ける」という。

まず立ち寄ったのは、屋外でカットメロンやホタテ焼きなどを売る店。岡田さんは「どちらも大丈夫。北海道のメロンは喜ばれます」と言い、ムスリムにも人気が高い。甘いメロンを味わった後、海鮮丼屋のメニューの看板を眺めると、岡田さんは「しょうゆにはアルコールが含まれます。イクラも避けた方が良い」と指摘。アルコールを除いた「ハラルしょうゆ」で対応できるという。一方、開きほっけ定食は「(しょうゆと同じくアルコールが含まれることもある)みそ汁を頼まなければ多分OK」。コーヒー・紅茶も大丈夫という。

続いて土産物を選びに洋菓子店へ。「『ショートニング』『乳化剤』は、豚由来のものが含まれていることもあるので要注意」と言う。人気のチョコレートの原材料欄に「ショートニング」とあり、店員に聞くと「ショートニングは植物由来ですが、ココアバターが動物由来」と教えてくれた。菓子の土産品は、まだハードルが高そうだが「成分をすぐ答えてくれる店員がいると(ハラルかどうか)判断しやすい」とのこと。

礼拝は稲穂地区にモスクがあり、ツアーの団体バスが訪れて礼拝していくことも。札幌では大丸札幌店に2年前に礼拝室が設置され「小樽にも、買い物の途中で礼拝できる場所があるといいですね」と岡田さん。

小樽観光への提言を聞いてみた。「飲食店ではハラルしょうゆと専用の食器を用意してもらえるといいですね。値段は少し高くても、安心して食べられる店は口コミで評判が高まります。ビジネスチャンスにもなりますよ」とほほ笑んだ。

■礼拝マット用意 専用調理室活用宏楽園

小樽市内に宿泊するイスラム圏からの観光客数(2015年度)はマレーシア4842人、インドネシア878人。外国人全体の5・8%だが前年度から2倍以上に増え、日帰り客も含めるとさらに多くの観光客が訪れているとみられる。

小樽市内にはハラル食材を扱う店「アル・ヌール ハラルフード」が昨年オープン。朝里川温泉の旅館「おたる宏楽園」は今年4月からムスリム向けのサービスを始めた。礼拝用のマットを無料で貸し出し、食事はムスリム向けの専用調理室で調理した和食会席などを提供。まだ利用は少ないが、利用者は「おいしい」などと喜んでおり、「今後もムスリムの客が増えるのは確実なので、良いサービスを提供したい」とする。

小樽近郊では、ルスツリゾート(留寿都村)が12年にハラル認証を取得した。札幌では市や経済団体が協力し、ムスリム向けの飲食店情報をホームページで紹介している。

出展:北海道新聞

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/doo/1-0287361.html