目的を持ったテーマ性の高い旅行がニューノーマルに!?アフター/ウイズコロナ時代に旅行業界全体で考えるべきこと
先日、岐阜県郡上市が観光庁のスキー場に対する総合的な補助事業「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」の支援地域に選ばれたニュースを見ました。インバウンド回復も見据えてスキー場及び周辺一帯の観光と連携してこれから環境整備などされていくということでさらなる発展を期待します。
スキー旅行というのはまさに「目的を持った旅行」の典型的な例だと思いますが、アフター/ウイズコロナの世界ではこのようなテーマ性が高く、目的を持った旅行が増加すると以前の記事
”アフターコロナの旅行業界とは?旅行スタイル編”でも紹介しました。
しかしながら、テーマ性が高い、目的をもった旅行とはどのようなものでしょうか。ニューノーマルとなる可能性がある旅行スタイルを掘り下げて考えることで旅行業界が今後対応すべきことやあらたなビジネスチャンスについて今回の記事で紹介したいと思います。
■テーマ性・目的をもった旅行とは
テーマ性の高い旅行、目的をもった旅行とは具体的にどのような内容でしょうか。一例ですが、以下のような内容が考えられます。
・アニメ、ドラマ、映画ロケの聖地巡礼
・テーマパーク、美術館、博物館など
・スキー、スノボーなどスノースポーツ
・サーフィン、スキューバーダイビングなどマリンスポーツ
・登山、ハイキング
・バードウォッチング、昆虫採集、歴史研究など趣味や研究
・神社仏閣へのお参り、札所巡り
・家族、友人、知人に会いに(帰省含む)
・出張などビジネス
ご当地料理を食べることが目的、何もせずにゆっくりとした時間を過ごすことが目的ということなども含めて、他にも様々なテーマや目的が想定されます。旅行のテーマや目的は旅行者自身の価値観によって設定される為、第三者からは分かりづらい部分もありますが、旅行をする「動機」が今まで以上に明確になる可能性があるということは言えると思います。では、そのような状況下で旅行業界はどのような対応や旅行者へのアプローチをすれば良いでしょうか。
■旅行業界の対応
旅行会社、観光地、交通機関、旅行者など全員が感染防止対策を徹底することは大前提として、今回はテーマ性が高く、目的をもった旅行スタイルが増加することを想定した時に旅行業界が対応するべき項目を提示できればと思います。
①宿泊施設
特に大都市圏以外の観光地にある宿泊施設に言えることですが、施設内で体験できることはもちろん、周辺エリアも含めた「地域固有の体験」を開発及びブラッシュアップすることが重要です。旅行者の目的は様々ですが、施設や地域が持っている固有の体験が分からなければその施設や地域を訪れる動機にならない為、ニーズが合う旅行者を積極的に誘致する為に、「ここに来たらこんな貴重な体験ができる」ということをあらためて見直し継続して発信していくことが大切になると思います。
②旅行会社
既存のテーマ型旅行商品をブラッシュアップし、付加価値を付けながらアプローチすることを検討した上で、既存商品にとらわれないテーマ型旅行の造成、さらには旅行ニーズをあらたにつくっていくという積極的な企画を期待したいです。
参考:クラブツーリズム(テーマ旅行ページ)https://www.club-t.com/theme/
また、インターネットの普及に伴い旅行手配が個人でできる時代となった今だからこそ、本来旅行会社の存在価値であった旅行のプロとしての提案力をあらためて高めることが必要となってきます。欧州などではトラベルコンシェルジュやトラベルプランナーから有料で旅行計画・手配などのアドバイスを受けるサービスがあり、日本と欧州で旅行市場の成熟度合が違う部分もある為一概に比較できないですが、コンシェルジュ機能を旅行会社が中心となってサービス化することは目的をもった旅行者が多くなる状況下ではより効果的に機能する可能性はあると思います。
その他、感染拡大防止の観点から考えても一人旅やカップル、家族旅行、キャンプ(キャンピングカー移動含む)、などの市場はさらに拡大するかもしれません。
③ガイド
地域に根差したツアーガイドや専門性をもったガイドスキルは今後より必要とされるのではないでしょうか。一人旅を含めた個人旅行の割合がさらに増える状況で、旅行者のニーズを満たすガイディング業務は地域や人とのふれあいを求める旅行ニーズとも合致すると思います。
④旅行情報メディア
旅行情報メディアの役割として、今まで以上に多様化する旅行ニーズに対応する情報発信力を持つことは前提として、専門性をもったガイドやツアーとのマッチング機能、同じ趣味・嗜好をもつ旅行者の為のコミュニティープラットフォーム機能などメディアの枠を超えた旅行業界全体を盛り上げるサービス展開を期待したいです。
■まとめ
テーマ性が高い、目的をもった旅行ニーズに対応していくということだけに留まらず、アフター/ウイズコロナの状況下では、旅行業界全体の存在意義を日本及び世界にあらためて提示するチャンスであるとも言えます。旅行自体の自粛気配がある中で「旅行の価値」を旅行業界側から創造し、発信し続けることが重要です。進化し続けるデジタルテクノロジーが人々の生活を豊かにしていくという「デジタルトランスフォーメーション」ならぬ、進化し続ける旅行サービスが人々の精神と生活を豊かにしていく「トラベルトランスフォーメーション」になることを期待します。
著者:JOINT ONE 嶋田拓司