リセットされたインバウンド観光、リスタートに向けたプロモーションとは!

2021年に入り、「ポストコロナに向けた」、「コロナ収束後を見据えた」、「インバウンド回復に備え」、など訪日観光客が戻ってきた際の対応や事前プロモーションに対する話題が少しずつ増えてきたように思います。とはいえまだまだ見通しがたっていないことも事実ですが、新型コロナウイルスでリセットされた世界中のインバウンド観光からいち早く回復に向かう国が日本になることの期待も込めて、リスタートに向けた訪日インバウンドプロモーションについて考えてみました。

◇◆インバウンドは国家間の観光競争

(国の)観光商品を世界に向けて販売することが、インバウンド旅行者の獲得につながるという観点から、インバウンドは国家間の競争です。コロナ禍前、訪日旅行者が多かった国は、4カ国合計で全体の80%程度を占める中国、韓国、台湾、香港ですが、この4カ国のアウトバウンド上位国はどのような状況だったでしょうか。

中国:1位香港、2位タイ、3位マカオ、4位日本、

韓国:1位日本、2位中国、3位ベトナム、4位米国、5位タイ

台湾:1位中国、2位日本、3位韓国、4位香港、5位ベトナム

香港:1位中国、2位日本、3位台湾、4位マカオ、5位タイ

韓国では日本が1位であることの他、中国、台湾、香港でも上位であり、相対的にみても日本が人気の旅行先であると言えます。

では、東南アジアではどうでしょうか。

以下日本の順位です。


フィリピン:5位

ベトナム:8位

タイ:4位

マレーシア:7位

シンガポール:7位

インドネシア:6位

インド:25位


東アジア4カ国と比較すると、日本からの距離が離れ、航空便の本数も少ないことなどもあり、順位は下がります。

さらに、欧米豪ではさらに日本の順位は下がります。


米国:13位

ドイツ:44位

フランス:29位

英国:38位

イタリア:36位

スペイン:31位

順位だけがすべてではないですが、ポストコロナでインバウンドがリスタートし始めた際には、この順位を日本全体で少しでも上げていく努力をすることが大切です。日本政府には新・観光立国宣言としてあらたなスタートダッシュをきれるような舵取りを期待したいです。

また、各国のアウトバウンド旅行者を国家間で取り合うことが想定される「コロナ収束期=インバウンドリスタート時期」には、日本より上位にある国よりも、より安心で魅力的な観光コンテンツを訴求するプロモーション戦略が求められます。

データ参照元:JNTO訪日旅行データハンドブックhttps://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/jnto_databook_2020.pdf

◇◆課題に対する解決を今のうちに

コロナ禍前までは日本のインバウンド観光はある程度順調に推移していましたが、その中には日本としての課題も多くありました。一例として以下のような項目があります。


・首都圏と地方の訪問数や宿泊数の格差

・日本人観光客とのバランス

・地域のルールや旅のマナー

・Wi-Fi、多言語対応など環境整備

・オーバーツーリズム

・接客、コミュニケーション


このような課題に対しては、民間と行政もしくは地域企業と住民が一体となり、今一度どのような対策が考えられるのかあらためて考える時間を持つことは必要ではないでしょうか。

そもそも、インバウンドに頼り過ぎるビジネスモデルがリスクであることが、コロナ禍であらためて露呈した部分もありますが、災害も多い日本では常にそのリスクが内在している中で観光立国を宣言してきた経緯もある為、リスクを踏まえて、インバウンド観光を今後どのように発展させていくか今のうちに過去の事例を教訓に検討していく必要があります。

◇◆リスタートを見据えたインバウンドプロモーション

上記の課題を踏まえ、日本として今後どのようなプロモーション戦略が必要でしょうか。

以下大切なことは3つ挙げられます。

【1】東アジア4カ国(中国、韓国、台湾、香港)に対する集中的なプロモーション
コロナ禍前、訪日旅行者全体の80%以上を占めていたこの4カ国は、今後も主要ターゲット国であることは変わらないと思います。国際情勢や政府間の関係などコロナ禍前との変化もあり、難しい課題もありますが、まずコロナ禍前の水準を目指す為には、この4カ国を外すことは不可能です。

【2】ローカルでディープな観光コンテンツを発信
バーチャルツアーや越境ECなど国際間においても、オンラインで旅行や買い物ができる時代となった現在、実際に足を運んでもらう為には、スタンダートな観光コンテンツも大切ですが、よりローカルで、よりディープな日本の魅力を発信し、旅行に対する興味・関心を引き起こすことが重要です。特にコロナの影響で海外旅行に対しては明確な動機をもたないと動かないという状況になる可能性もある為、今まで以上に、心に響くストーリー性のあるインバウンドプロモーションが求められます。

【3】競合国よりも早いタイミングで情報発信
国により状況の違いはある中でも世界的に収束ムードが膨らんでくる状況で、徐々に航空便も回復してくると想定されます。そんな中、インバウンドリスタート時の前に競合国より先に魅力的な観光コンテンツの情報と安心して旅ができる受入れ体制が整っていることを早いタイミングで発信していくことが大切になります。

◇◆まとめ

新型コロナウイルスの感染対策が出来ていることはどの国も大前提となった昨今では、予防対策の情報発信も大切ですが、より魅力的な観光コンテンツをどれだけ素早く競合国に先立って発信できるかが大事であると思います。もちろん、発信ばかりに気を取られ、計画や戦略の立案、受入れ体制整備などが後回しになっては本末転倒である為、行政と民間企業が連携しながら進めていく必要があります。世界中の旅行者に対して旅行動機を奮起させる刺激的な訪日インバウンドプロモーションを実施し、あらたな観光立国に向けた素晴らしいリスタートがきれることを願います。

戦略立案から実行まで一気通貫で対応致しますので、インバウンドプロモーションのご相談は弊社までお気軽にご相談ください。

著者:JOINT ONE 嶋田拓司