ラグビーW杯で増える訪日外国人 もらったチップを申告しないと脱税になるのか
ラグビーW杯日本大会が9月20日に始まり、ラグビージャージを着た外国人を見かける機会も多くなっている。
政府は、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年の訪日観光客数の目標を4000万人と設定し、実際に2018年には初めて3000万人を超えた。
日本を訪れた外国人が、自国の文化のままチップを支払ったとき、受け取った店員に課税義務は生じないのだろうか。税務処理上のトラブルが起きる恐れがないか、BLOGOS編集部が調べた。
大手チェーン「考えたこともなかった」
まず大手飲食チェーン、タクシー会社数社に「①チップをもらう機会はあるか②チップの受け取りについてルールを設けているか」の2項目を問い合わせた。
「①チップをもらう機会はあるか」については、「受け取っていることは把握しているが統計は取っていない」「チップを受け取っているという話は聞いたことがない」など各社回答が分かれたが、金額を把握している企業はなかった。
「②チップの受け取りについてルールを設けているか」については、「受け取らないことにしているがルールはない」という回答もあったが、基本的には「ルールは設けていない」「考えたこともなかった」という回答が得られた。
◆国税庁HPで課税なしと明示 ただし「例外に注意」
国税庁のホームページで「質疑応答事例」を確認すると、消費税のページに「チップの支払」という項目があった。
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【照会要旨】
運転手や女中等に対するチップは、課税仕入れに該当するのでしょうか。
【回答要旨】
運転手や女中等に対するチップは、運送等の役務の提供の対価の支払とは別に支出するものであり、提供を受ける役務との間に明白な対価関係は認められませんから、課税仕入れに該当しません(法21八、十二)。
【関係法令通達】
消費税法第2条第1項第8号、第12号
注記
平成30年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
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要約すると、チップは課税対象にはならないが、一部例外があるということのようだ。
詳しい話を国税庁に聞いてみた。
――チップが課税対象にならないのはなぜでしょうか
レストランであれば、料理やサービスに対する価格が決められていて、その金額が「提供を受ける役務との間に明白な対価関係」が認められる支払いにあたります。その金額以外で、サービスマン個人へのお礼などとして支払われるチップは、消費税課税の対象にはならない、という意味合いです。
――「一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありません」とありますが、課税されるケースもあるということでしょうか
例えばチェーン店などの場合、企業で一度すべて回収して賞与のような形で振り分けるなどの対応をしていた場合、チップとして受け取った金額は「収入」にカウントされる可能性があります。
また、給与所得者が個人として受け取った場合でも、年間で20万円を超えてしまうと雑所得として確定申告が必要になってしまいます。
◆日本にも「お心づけ」として存在した文化
――来年には東京五輪・パラリンピックも控え、訪日客が増えることが予想されます。これらの対応について、企業に周知する予定はありますか
今のところ考えていません。
外国人の方に限らず、旅館の「お心づけ」など同様の例は昔からありましたが、これまでも混乱はしてきませんでした。
もちろん、今後現場の状況を聞きながら判断をしていくということになると思います。
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受け取ったチップは基本的に課税対象にならないが、年間の受取額が20万円を超えてしまうと雑所得になるというのが気をつけたいポイントだ。
海外セレブや石油王から気前よくチップを弾んでもらったときは、確定申告をお忘れなく。
出典:BLOGOS