インバウンド再開に向けた日本政府観光局の取り組み
経団連の観光委員会(菰田正信委員長、新浪剛史委員長、武内紀子委員長)は6月17日、オンラインで会合を開催した。日本政府観光局(JNTO)によるインバウンド再開に向けた取り組みについて、吉田晶子理事長代理から説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
訪日外国人数は、2019年に過去最高の3188万人を記録したが、コロナ禍に伴う水際規制の強化により観光目的の入国者はゼロになった。今後、日本側での水際規制の緩和が進むにつれて、隔離期間等の緩和が進んだ国から段階的にインバウンドの回復が進むと期待される。その際、航空ネットワークの回復が重要となる。国際航空運送協会(IATA)が公表しているデータによると、北米、欧州域内では新型コロナウイルス前の水準近くまで国際線が回復しているのに比して、アジア地域では大幅に遅れている。JNTOでは入国手続き等の実用情報の発信、SNSやメディアの活用などに取り組んでいる。今後は水際規制の緩和に合わせて、誘客・航空路線回復に向けた航空会社・旅行会社との共同広告の展開等、機動的なプロモーションを実施する予定である。
中長期的な取り組みとしては、高付加価値旅行市場の開拓、持続可能な観光の推進、国際会議の誘致等を掲げている。
新型コロナ前は多数の観光客が日本を訪れたが、旅行消費額は目標値に遠くおよばなかった。コロナ禍を経て、1人当たりの消費単価の高い高付加価値旅行市場の重要性が一層高まっている。同市場の主力である欧米豪5カ国(米、英、独、仏、豪)の市場規模は約4.7兆円に達する。JNTOでは、主に欧米の高付加価値旅行市場向けの商談会などに参加してきている。また、高付加価値旅行者が満足する上質な宿泊施設が地方に少ないことから、観光庁では地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりを支援することとしている。コロナ禍以前、国内観光とインバウンド観光の比率は宿泊数ベースで8対2であった。インバウンドのみならず国内観光においても高付加価値化を図ることが重要である。
観光の経済効果によって、地域の環境と文化の継承を図る「持続可能な観光」が世界的な流れとなっている。新型コロナ前後で、受け入れ側の地域・旅行者双方の価値観が変わり、これまで大都市圏の特定の地域に集中していた観光客をより地方へ分散させる契機となることが期待されている。JNTOでは、SNSを使い、地方自治体や地域DMO(観光地域づくり法人)から提供を受けて、あまり知られていない地域の観光情報を海外に発信している。あわせて、「持続可能な観光」のコンセプトに沿った各地の観光コンテンツについて、海外向け情報発信を強化することとしている。JNTOの海外向けSNSアカウントのフォロワーは1000万人を超えており、情報発信の強力なツールとなっている。
国際会議の誘致強化については、今般、MICE(Meeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Event)の国際団体と連携協定を締結した。今後、23年にATWS(アドベンチャートラベル・ワールドサミット、北海道)、25年に日本国際博覧会(大阪・関西万博)等が開催される機会をとらえ、同団体の広報チャネルを活用しながら、日本の魅力を海外に発信していく。
【産業政策本部】
出典:週刊経団連タイムス