日本中から批判殺到。経産省「温泉マーク」変更中止のドタバタ劇
今年に入って、経産省が温泉や案内所などの場所を示す案内表示用のマークの国内規格約70種類の改正を検討すると発表したことをご存知でしょうか? 誰もが知る「温泉マーク」が変更されるとあって、ネット上で大きな話題となり、全国の温泉組合も猛抗議。同じく反対の立場をとるメルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者で元『旅行読売』編集長の飯塚玲児さんは、反対の声が多かった「温泉マーク」の変更を断念したとのニュースを受け、机上の空論しかできない経産省へ苦言を呈しています。
温泉マーク、存続へ!当然でしょう?
12月7日のヨミウリオンラインの記事に以下のようなことが載っていた。
案内用図記号の改正を検討する日本工業規格(JIS)の委員会が6日、経済産業省で開かれ、見直しの対象となっていた3本の湯気を記号化した「温泉マーク」について、存続を求める声が相次いだ。 当初方針から一転しておなじみのマークは今後も使い続けられる見通しが強まった。
経産省は7月、温泉マークが国際標準化機構(ISO)の記号と異なり外国人観光客に分かりにくいとして、見直す検討を始めた。 温泉マークは料理店と勘違いされる場合があった。
これに対し、別府(大分県)や由布院(同)といった温泉地の観光業界から「現行マークは幅広く定着している」などとして、反対の声が上がっていた。
経産省は今回の議論をふまえて登録マークの改正案を取りまとめ、来年7月にJIS登録を改正する。
存続は当然だと思うし、そもそも、この問題は『温泉批評』の最新号でも取り上げている。 この企画を編集会議で出したのは他ならぬ僕で、今年の7月2日に企画案を出して、7月21日の企画会議で決まったものだ。
そのとき編集長は「変わる、という情報もそうだけど、変えるな、というスタンスで記事を」といい、最終的に現在発売中の『温泉批評』での記事につながった。 記事を書いてもらったのは旅行作家でカメラマンの藤井勝彦氏。
僕は写真集めなどで経産省に電話をしたり、温泉マーク発祥の地とされる群馬県磯部温泉の観光担当に連絡したりして、諸々情報を集めていた。
記事掲載前から、この磯部温泉も反対の声を上げたし、別府や湯布院も反対の意見書などを提出したりしていた。 ニュースで見ると、おんせん県・大分の反対が変更を覆したみたいになっているが、そうではないと思う。
日本人はみんな、このマークを変えて欲しくなかったのだ。
『温泉批評』の記事では、韓国や台湾を含めて諸外国の温泉マークなども紹介しつつ、温泉マークの歴史についても詳述している。 ぜひご購読を。
具体的にいうと、多くの外国の温泉マークはただの噴水みたいなものだ。
日本の温泉マークに比べると、全然おもしろくも何ともない。 旅情もない。
外国人が料理と勘違いするなら、勘違いさせればいいのだ。 そもそも、風呂ののれんにしばしば書かれている「湯」だって、中国の方から見れば「スープ」を意味するのである。 「タン」と読むのだけどもね。
スープを飲みたくて銭湯に入った中国人が驚いた、というなら、その中国人にとって、日本の忘れられない思い出となるだろうし、そうした文化の違いを体験できるところにこそ旅の醍醐味がある。
それを、オリンピックを契機に、などというアホ臭いことで変えて、それが外国人にとってうれしいのかどうか、はなはだ疑問である。
こういうお役所の人の机上の空論的「こびへつらい」にはまことに腹が立つ。
さんざん騒いで、結局変更無しかよ、という気もするし、まあ、議論が出たということでよしと考えるべきなのか。
いずれにしても、経産省に電話したときに窓口になってくれた女性の方は、「まだ変わると決まったわけではないんです。 皆さんからたくさんのご意見をいただいていて、私個人としても変えなくていいんじゃないかなぁと思っています」と言っていたことだけはご紹介しておきたい。
まあ、今回は、そうした「たくさんの意見」が通って、温泉マークの変更はなくなりそうである。 今から5か月も前に経産省に電話をした僕の意見も、その中の一つであると信じたいものである。
出展:MAG2 NEWS