これからの本気のまちづくりを考える!観光と連携した人口増加とエコシステム戦略
かつて観光都市として栄えた静岡県の熱海が衰退の一途をたどっていましたが、2009年ごろからV字回復していることはご存じでしょうか。その立役者は、地元の未来に危機を感じた市来(いちき)さんが東京のコンサルティング会社からUターンして立ち上げた「株式会社machimori」及び「NPO法人atamista」という企業です。現在でもビジネスとして熱海の発展に注力して街づくりを手掛けています。
参考:衰退から一転、「熱海の奇跡」が実現した舞台裏を、再生キーパーソンに聞いてきた―街づくりと観光の連動から「関係人口」の創出までhttps://www.travelvoice.jp/20201108-147348
この取り組みの成功事例はすべての地域に当てはまるものではないと思いますが、参考になる部分は多々ある素晴らしい取り組みだと思います。
キーワードになるのは、「観光」、「交流・関係・定住人口」、「エコシステム」ですが、コロナ禍の今後のまちづくりがどうあるべきかキーワードごとに考えてみたいと思います。
◇◆観光
まちづくりにとって観光との連携はどのような地域でも必須となります。ただ地域の特色や立地、人口構造などに応じて観光促進戦略を検討する必要があります。ただおおよそどの地域にも共通していることは、まずは「観光の力」が地域にどのように貢献しているか、もしくは貢献できるポテンシャルがあるか地元住民や地元企業が正確に認識することが大事だと思います。その上で、まちぐるみで観光に関わっていくという意識の向上や自然と地元に貢献できる仕組みを構築することが重要です。その為、熱海の奇跡でも大きな志をもってキーマンとなった市来さんのような存在は非常に重要です。地域住民含めまちづくりに参画するプレイヤーの輪を拡大し、適材適所で再配置した上で、目標をもって一丸となって取り組んでいく中で、より魅力的な観光の形が見えてくるのだと思います。
また、現在のコロナ禍の中、オンラインツアーやオンライン商談会、その他デジタル技術を観光に活かすことは必須となっている時代である為、地元住民・観光業者との間に入ってデジタル技術の活用をサポートするプレイヤーも必要です。
◇◆交流・関係・定住人口
・交流人口とは
通勤・通学、買い物、文化鑑賞・創造、学習、習い事、スポーツ、観光を通してその地域に訪れる人々のこと。
・定住人口とは
居住者・居住人口のことで、その地域に住んでいる人々のこと。
・関係人口とは
特定の地域に継続的に多様な形でかかわる人々のこと。具体的には兼業、副業、ワーケーションなどを通してその地域と関わる人々のことを指す。交流(観光)と定住の間のような概念。
上記3点はまちづくりを考える上で重要な概念であり、それぞれの人口を増加させる為に、各概念を一旦分けて考える必要があります。つまり各概念の人口ごとに増加させる戦略を考えることが重要です。
関係人口創出の一例ではありますが、熱海の奇跡でも「街のファンをつくり、ファンがサポーターになり、サポーターが地元のプレイヤーになるサイクルを作り出したい」として、「30代のクリエイティブな人材の誘致」をされたということです。熱海でまち起業家を誘致・育成し、地元住民との交流も創出していくということで、様々な相乗効果、波及効果が期待できます。
またコロナ禍で注目が高まっているワーケーションも関係人口の創出であり、首都圏居住者がその地域に関わっていく入口となる可能性が十分にある為、地方都市がワーケーション誘致を戦略の一つに検討することは大切です。
◇◆エコシステム
まちづくりにおけるエコシステムとは、観光資源、食品、デジタル産業も含めたコンテンツを地域の素材で創り出し、またその利益を地域で循環させていく仕組みのこと。地域の魅力を高めることと同時に持続可能な経済を支える基盤としてもエコシステムの構築はとても重要です。適正なエコシステムの構築には地産地消、再生可能エネルギーなどの実現が重要となりますが、様々な障害もある為、自治体やDMO、熱海の市来さんのような民間・NPO団体など熱意をもって先導するプレイヤーを中心に関係各所が連携していくことが非常に重要です。
◇◆まとめ
観光業、飲食業、不動産業、IT企業、DMO、地方自治体、地元住民が連携することを大前提として、「観光」の地域への貢献度を再確認する必要があり、その中で観光資源のブラッシュアップやデジタル技術の活用、その他あらたな観光資源の発掘を検討することが大事です。
同時に、交流・関係・定住人口の各概念を理解した上で、それぞれに対して増加戦略を検討し実施すること。
そして、持続可能な地域経済を形成する為、観光促進と人口増大の観点を踏まえて街全体、もしくは村や市など行政区分を通り越した広域エリア全体でエコシステムを構築していくことが、これからのまちづくりに求められることかもしれません。
著者:JOINT ONE 嶋田 拓司