必ずやってくる・・・!訪日インバウンド回復期を見据えた宿泊施設の動向
明確な時期は見えないものの、インバウンド客が回復する段階は必ずやってきます。
その時に備えて、観光業やインバウンド関連事業者は水面下で動き出しています。
そこで今回は、観光業の中でも特に宿泊施設に絞って、アフターコロナを見据えた動向をいくつかご紹介したいと思います。
◇◆再開、新規開業
・ファーストキャビンの再開
2020年春から営業を停止していた羽田空港内の宿泊施設「ファーストキャビン羽田ターミナル1」は2021年4月23日より、関西空港内にある「ファーストキャビン関西空港」が同年5月11日より再開となった。当ホテルは、空港利用客を中心に24時間対等が可能な機能性を重視したキャビンのような宿泊施設で、価格帯はビジネスホテルとカプセルホテルの間。当面は空港勤務者をターゲットとしながら、アフターコロナでの国内旅行者、その先のインバウンド旅行者を見据えた再スタートです。
参考:「ファーストキャビン関西空港」の営業再開を発表、羽田空港でもhttps://www.itmedia.co.jp/business/articles/2105/09/news011.html
・2024年までに11ホテル開業
沖縄県では、2024年までに少なくとも11ホテル(2674室)が新規開業する予定です。アフターコロナでの変化する旅行ニーズへの対応及び競争を勝ち抜く為に、独自のコンセプトを打ち出す宿泊施設もあります。その一つに2021年5月10日にグランドオープンする恩納村山田のリゾートホテル「ウムイフォレストヴィラ沖縄」があります。コンセプトは、富裕層を意識した美・健康・エコとして、一棟貸し切りのヴィラタイプの施設。極力非接触となるよう部屋内でのチェックイン・チェックアウトが可能であり、当面は国内客をメインターゲットとしていますが、インバウンド需要の回復まで見据えています。
観光業を取り巻く厳しい状況の中、沖縄県でホテル開業予定が多いのは、アフターコロナでの沖縄のポテンシャルを見越した動向であるという専門家の声もあります。
参考:沖縄で2024年までに11ホテル開業アフターコロナ見据え差別化図るhttps://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/750122
・日本文化継承の役割を持った新しいタイプのホテル
訪日外国人も多く訪れる東京・浅草に新しいタイプのホテル「THE KANZASHI TOKYO ASAKUSA」が2021年4月26日よりグランドオープンしました。インバウンド観光が消滅する中、観光地としての在り方をあらためて見直す浅草の地で、日本及び浅草の文化を次世代へ継承することをテーマにし、地元産業や伝統芸能とコレボレーションした施設となっている新しいタイプのホテルであることは非常に興味深いです。
参考:美しい日本文化を継承するコンセプトホテルが東京・浅草にリブランドオープン
https://tabizine.jp/2021/05/10/391916/
◇◆テクノロジーを活用
インバウンド客を受け入れる際、課題の一つに「接客」に関連することがあると思います。宿泊施設でもしかりですが、テクノロジーを活用しアフターコロナを見据えた宿泊施設の課題解決サービスをいくつかご紹介したいと思います。
・TradFit
TradFitは「音声、AI、IoT技術などを活用し、宿泊施設の運営・旅行者の体験を向上するサービス」で、具体的には宿泊施設に特化した多言語対応の画像付きAIスピーカー。コンシェルジュ代わりとなるアプリケーションや多言語対応チャットボットなどと連携し、訪日旅行者と宿泊施設双方が抱える課題の解決を目指して開発された。
TradFit:https://tradfit.com/
・QRHOTEL
「WeChatミニプログラム」をプラットフォームとした、訪日中国人観光客の接客、送客を支援するソリューションでコンシェルジュ代行ともいえるサービス。主に訪日中国人のタビナカで活用されることを想定しており、QRコードをスキャンするだけでサービスが立ち上がる為、ユーザー(ゲスト)は自身の端末での操作となり、接客においての非接触と非対面が実現可能となっている。中国最大級のレストラン、ホテル、観光スポットなどの口コミサイト「大衆点評」とも連携している為、タビマエの新規顧客へホテル・旅館のPRができることも強み。
QRHOTEL:https://e-business.co.jp/case-02ISS-QRHOTEL.html
・プライムコンシェルジュ
ゲストのスマホで、まるで仲居さんが接客をしてくれるようにおもてなしを提供できるWEBサービス。客室の説明や館内インフォメーションなどの基本情報、大浴場やレストランの混雑状況のご案内まで「お客様の困った」に答えることができることが特徴。基本的には日本人旅行者向けに開発されているが、高性能機械翻訳で多言語展開も可能でインバウンドにも活用できる。
プライムコンシェルジュ:https://prime-con.jp/
◇◆まとめ
旅行者にとって宿泊施設は、旅の拠点となる重要な施設です。また地域にとっては、旅行者に対して、地域の良さを知ってもらう為の大切な接点の一つでもあります。観光業全体厳しい状況であることに変わりはありませんが、その中でも固定概念に捕らわれずできることを模索し行動に移している企業は存在し、訪日外国人旅行者が回復することを見越した動きもその一つであると思います。
難しい決断を伴いながらも、いち早く行動した観光業の皆さんが報われるよう心から願っています。
著者:JOINT ONE 嶋田拓司