「大好き台湾」 駅の壁面に東北1200人のメッセージ 震災時の感謝伝える
東日本大震災発生から11日で10年を迎えるのを前に、当時の台湾からの支援に改めて感謝を示そうと、東北の人々から台湾に向けて「ありがとう台湾」「大好き台湾」のメッセージを伝える壁面ラッピングが3日、台北メトロ(MRT)中山駅の改札前に登場した。台湾への思いを書いたメッセージを掲げる東北の人約1200人の写真が壁一面に敷き詰められた。目を引くラッピングに、足を止めて一人ひとりの写真を眺める人やカメラを向ける人の姿もあった。
企画したのは、台湾で青森や岩手、宮城などのインバウンドを支援する向井純さん。掲示料金約300万円を自腹で出した。「行き来ができない今だからこそ、感謝の思いや台湾を好きな気持ちを純粋に伝えられれば」と壁面ラッピングに込めた思いを語る。
壁面ラッピングの大きさは縦2.5メートル、横18メートル。向井さんの呼び掛けに応じた1209人の写真が並べられている。向井さんがフェイスブックで写真の募集を始めたのは1月下旬。当初は「最低100人」と見込んでいたが、締め切りまでの約2週間で予想を大きく上回る人数の応募があった。参加者の内訳は東北6県が1152人、JR関係者が54人。年齢は赤ちゃんから高齢者までと幅広い。一般の人や自治体関係者のほか、三村申吾青森県知事や村井嘉浩宮城県知事も企画に参加した。参加者が持つボードには中国語で「東北で待っています」「一緒に頑張りましょう」「小籠包が恋しいです」など台湾への思いがつづられた。
向井さんは東京生まれ、台湾育ち。父親の仕事の関係で、生後まもなく台湾に移り住んだ。東北にはゆかりがなかったが、約20年前に日系の広告代理店から独立し、旅行コンサルティング会社、向日遊顧問を立ち上げる際に、当時付き合いのあった航空会社からの紹介で東北のホテルをまとめる団体と接触したのをきっかけに東北との縁が生まれた。これを機に東北との関係は深まり、青森県や岩手県のインバウンド支援をするようになった。
東日本大震災からまもなく10年。訪台した日本人が何かにつけて台湾の人々に「ありがとう」と言うことに対し、日台交流を現場レベルで見ている立場として、台湾の人が「もういいよ」と思っていることを感じていたという向井さん。だがそれでも、10周年の節目の年では「あえて(ありがとうを)言うべき」だと考えた。それに加え、新型コロナウイルスの影響で海外旅行が難しい状況が続く中で台湾を恋しく思う日本人の気持ちを何かの形にしようと企画を立ち上げた。「台湾を思う気持ちの大きさはみな同じ」との考え方から、知事も一般の人も、写真の掲載サイズは一様にした。
掲示費用は安くはないが、向井さんは「かけたお金よりも大きなものを感じられた」と話す。台湾に来られない人が写真を寄せてくれたことを嬉しさを感じ、その写真を見るだけで楽しく、満足感を得たという。
来月2日まで掲示される。一部の写真は今月13、14日に台北市の華山1914文化創意産業園区で開かれる日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会主催のイベントでも展示されるという。
出典:フォーカス台湾