京都市でなぜ今もホテル開発が続くのか 観光下火でも止まらない背景とは
新型コロナウイルス禍で観光需要が冷え込む中でも、京都市内でホテルの開発ラッシュが止まらない。2022年も高級ブランドや大型のホテルを中心に開業が相次ぐほか、複数の新規着工案件も控える。進出する事業者と、受け入れる地元住民。それぞれの思いを乗せ、京の街はどう変わるのか―。
東山区の三十三間堂や京都国立博物館のほど近く。外資系高級ホテルが軒を連ねる一角で昨秋、新たな五つ星ホテルの建設が始まった。国際的リゾートブランドの日本初進出となる「シックスセンシズ京都」。海外富裕層などの需要をにらみ、スパやレストランを備えた81室のホテルが24年春にも開業する。
名所旧跡が集積する東山区では、好立地への最高級ホテルの進出が止まらない。同区の面積は東京・品川区や港区の3分の1程度にとどまるが、そこに現時点で6軒以上、26年には帝国ホテルを含む10軒以上の国内外ブランドが開業予定。国内屈指の“高級ホテル激戦区”となる見通しだ。
開発企業や投資家はなぜ、京都に熱視線を送るのか。
「“日本らしいから”という一言に尽きる。1200年続く古都で、これほど国際的な競争力を持つ街はほかにない」。シックスセンシズ京都や京都東山バンヤンツリー(同区)の投資開発、運営を手がけるウェルス・マネジメントグループ(東京都)の千野和俊社長は、こう言い切る。
老朽化や後継者不足に悩む旅館やホテルをM&A(企業の合併・買収)などで取得し、高級宿泊施設に再生するのが同社の手法。市内の開発案件には、東南アジアの富裕層や欧米の機関投資家など国内外の投資マネーが集まる。
背景にあるのは、京都が「観光立国」の中核を担うとの根強い期待だろう。政府は、コロナ禍でもなお、訪日外国人客を30年に6千万人とする目標を明言した。
足元は、インバウンド(外国人観光客)の流入が止まっているが、千野社長は「訪日需要は24年春にも回復するだろう。パンデミックは必ず終わり、経済はゆるやかにではなくV字回復する」と期待を込める。
一方、市内の既存の宿泊施設は、淘汰と再編が進む。市の統計によると、市内の簡易宿所は昨年11月末時点で2974軒と19年から363軒減少した。「多額の改修費をかけた京町家の宿などは、損失を抱えての売却が相次いでいる」(市内の建築関係者)。その一方で、旅館・ホテルは29軒増の685軒と拡大基調が続く。
22年も、市内では「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」(左京区)を皮切りに、「ザロイヤルパークホテルアイコニック京都」(中京区)、「京都東急ホテル東山」(東山区)などが開業予定。100室超の大型施設が中心で、三菱地所や相鉄グループなど関東資本の攻勢が目立つ。アフターコロナを見据えた各社の競争は、激化の一途をたどりそうだ。
出典:京都新聞