地震対策に“おもてなし”の精神を
円安の影響もあって、訪日外国人観光客が急増している。今年は9月時点で過去最高だった2014年の1341万人を上回り、2年連続で最高記録が塗り替わる。このような状況で地震が発生したら、どうなるか。訪日外国人観光客と日本人とでは、地震が起きたときの対応や地震への受け止め方に違いがあることを理解しておく必要がある。
地震に慣れている日本人とそうでない外国人とでは、地震が起きたときの反応が異なる。地震は世界中どこでも起きているのではなく、全く地震のない国もある。
例えばブラジル、オーストラリアなどから来た人はちょっとした揺れでも大騒ぎして、冷静さを欠き、思わぬ事故を引き起こしかねない。一方、インドネシアやフィリピンなど地震が多い国から来た場合は、日本の建物の耐震性や行政の対策に関する理解が乏しいため、屋内にいた方が安全なのに自国と同様、やみくもに外へ飛び出すといった行動を取る可能性がある。
また、地震発生時の常識的対応を知らない外国人もいる。日本人なら地震後はエレベーターを使わないが、それを知らずにエレベーターで階下へ逃げようとするかもしれない。大きな地震が起きたら、とにかく日本から脱出を図ろうとする外国人もいるだろう。こうした場合は滞在への説得が必要となる。
最も大きな違いは、ほとんどの情報が日本語で発信されるため、外国人は情報を取得しづらいことである。そのため不安が増幅される。このような外国人と日本人の差を理解し、身近に外国人がいたら適切な支援を行う必要がある。
20年の東京五輪を控え、日本人の“おもてなし”の心が再認識されている。日本が世界有数の地震国であることを考えると、地震が起きたときに外国人旅行者に適切な支援の手を差しのべることは、極めて大切な“おもてなし”の行動になる。
東京都産業労働局は13年、ホテル・旅館などの宿泊施設業や、旅行斡旋(あっせん)業・バス運送業などの各種観光関係業界向けに「外国人旅行者のための災害時初動対応マニュアル」を作成した。原案のまとめに参加した筆者は、これらの業者が事前に準備しておくことや地震後の対応について提言した。
このマニュアルは、とりわけ初動対応における呼びかけの重要性を強調したもので、具体的には、(1)身の安全を守ること(2)危険から離れること(3)現在の状況を説明すること(4)冷静な行動をとること-などを推奨している。これは、観光関係の業界だけでなく、一般企業の社員にも実行してほしい内容である。
地震が起きたら自分の身を守り、周りに呼びかけを行う活動は「シェイクアウト運動」として全世界で展開されている。
地域防災支援協会は、東京五輪に向けて“おもてなし”の精神で有事に対応できる防災リーダーの育成に努めている。
出典:サンケイビズ
http://www.sankeibiz.jp/business/news/151027/bsg1510270500002-n1.htm