「なぜ日本へ何度も行くの?」、中国人の訪日リピーター3人に聞く
訪日中国人の現状を見ると、団体旅行客と訪日回数が初めての人が多いのが特徴です。人口の多い中国ですから、初めて日本へ団体旅行に出かける傾向が続くと思いますが、今後は次第に個人旅行やリピーターが増え、旅程や行動が多様化していくのは確実です。
とはいえ、すでに個人旅行で複数回日本を訪れている中国人は多く、筆者周辺にも「日本大好き!」という友人が少なくありません。中国の家庭で旅行の行き先や買い物の決定権はやはり女性にあります。中国人個人旅行者の志向を理解するため、個人旅行で日本を複数回訪れている女性の友人3人にインタビューをしてみました。今回はそのやり取りを紹介したいと思います。
「子供連れの海外旅行にはとても良い」
最初は、以前外資系広告会社に勤務し、現在はフリーの仕事をされている王穎静(ワン・インジン)さん。王さんは家族での日本旅行を本にして出版しています。タイトルを日本語訳すると『大きな手と小さな手をつないで――浪漫日本行き』。そこには日本で見聞したこと、感じたこと、そして家族の笑い声などが綴られています。王さんは台湾への旅行記も出版しています。
――訪日回数は?
「2回。2回とも個人旅行です」
――日本のどこに行きましたか。
「東京、鎌倉、箱根、大阪、京都、奈良」
――なぜ旅行先として日本を選択したのですか。
「子供連れの旅行だから。日本は飛行機に乗っている時間も短いし、時差もほとんどありません。フードストレスも少ないし、街の案内が漢字表記なので大体分かるのも便利。安全で公共の設備も整っているし、子供連れの海外旅行の選択としてとても良いと思う」
「言葉が最大の問題」
――1回の旅行の予算は? そのうち買い物にはいくら使いましたか。
「1人あたり2万元(約35万円)ほど。買い物にはその3分の1ぐらい使いました」
――日本で買ったものは?
「セイコーの腕時計、ミキモトのネックレス、化粧品(資生堂、SK-II、FANCL)、薬(小林製薬など)。あと子供の日用品(和光堂、ピジョンなど)」
――日本での買い物の良いところは?
「日本ブランドの商品は種類が多いし、外国旅行客には免税もあるから価格も魅力的です」
――日本で買ったものがなくなったら、中国国内で同じ商品を 買いますか。
「中国国内でも日本製品は多いので便利だけど……。安く手に入れたいときは友達に買ってきてもらいます。周りの友達も日本旅行へ行くことが多いから」
――次回、日本へ行くとしたらどこへ行きたい?
「北海道、沖縄。あと京都と奈良はもう一度行きたいです」
――日本以外の海外はどこに行ったことがある? それらの国と比べて日本の特徴は?
「子供を連れて東南アジアのいくつかの国と、フランス、イタリア、スイス、英国。日本は安全性が高いのと、飲食も含めた文化が近いので子供連れでも安心できる」
――日本で困ったことは?
「言葉が最大の問題。東京などの大都市圏は英語をしゃべる人が多いけど、地方都市だと英語が通じない。電車で移動するときなどが大変でした」
――日本に行くときの情報収集は?
「旅行サイトの記事。あと日本の旅行サイトの中国語ページも見ました」
――日本のどんな点が好きですか。
「静かに過ごせるところ。人と交流しなくても全部自分でできる感じ。交通も便利だし、観光地も規範的で安全な印象があります」
日本は「清潔だし、便利」
二人目は「桃ちゃんのママ」(仮名)です。筆者と同じマンションに住んでいる隣人で、子供の服や用品は日本製品をよく利用しています。以前はファッション関係の雑誌社に勤めていましたが、現在は専業主婦です。
――訪日回数は?
「2回。2回とも個人旅行」
――日本のどこに行きましたか。
「沖縄、大阪、京都、奈良」
――なぜ旅行先に日本を選択したのですか。
「清潔だし、便利だから」
――買い物はいくらぐらい?
「2万元(約35万円)ぐらい」
――日本で買ったものは?
「子供用品、おもちゃ、ミキハウスの靴、化粧品、日用品」
――日本での買い物の良いところは?
「品質や食品安全の面で心配がないところ」
――日本で買ったものがなくなったら、中国国内でも同じ商品を買いますか。
「百貨店とかでは買わない。個人の代理購入業者から買います」
――次回、日本へ行くとしたらどこへ行きたい?
「東京、箱根、北海道」
――日本以外の海外旅行で行ったことがあるのは? それらの国と比べて日本の特徴は?
「アジアのいくつかの国。韓国はブランド品が日本より安い。シンガポールはさらに食品安全に厳しい感じ。日本は清潔なのが良い」
――日本で困ったことは?
「言葉が通じない」
――日本に行く前の情報収集は?
「中国の旅行サイト」
――日本の何が好きですか。
「礼儀正しいところ。子どもや女性に優しいところ」
「日本は交通が便利、公共マナーが良い。食品の安全性も高い」
最後は香港系不動産会社でPRの仕事をしているCannyさん(仮名)です。
――訪日回数は?
「4回。すべて個人旅行です」
――日本のどこに行きましたか。
「東京、大阪、京都」
――なぜ旅行先に日本を選択したのですか。
「風景がきれいだし、豊かな文化がある。そして、中国から近いから」
――1回の旅行の予算は? そのうち買い物は?
「3万~4万元(約50万~70万円)ほど。買い物はそのうちの半分くらい」
――日本で買ったものは?
「服、部屋の装飾品など」
――日本製品の良いところは?
「品質がよい、設計が人に優しい、実際に使ってみると便利なものが多い」
――日本で買ったものがなくなったら、中国国内でも同じ商品を買いますか?
「いえ。海外旅行時に買います」
――次回、日本へ行くとしたらどこへ行きたい?
「北海道」
――日本以外の海外はどこに行ったことがある? それらの国と比べて日本の特徴は?
「韓国、タイ、シンガポール、マレーシア、カンボジア、スリランカ、米国、英国、ドイツ、イタリア、フランス、チェコ、スイス、ベルギー、マルタ、トルコ。日本は交通が便利、公共マナーが良い」
――日本で困ったことは?
「特にはなし。ビザ取得が面倒でした」
――日本に行く前の情報収集は?
「窮遊網」(筆者注:中国のバックパッカー向け情報サイト)
――日本の何が好きですか?
「食事、建築、環境が良い。食品の安全性が高い」
個人旅行者には異なるアプローチで新たなビジネスチャンスを
今後増える中国人の訪日個人旅行者への集客アプローチや情報発信は、団体旅行に対するものとは異なりますし、インバウンドを対象とする日本の受け入れ側の姿勢も違ってきます。
例えば飲食店では、団体旅行を受け入れるには席数の多いレストランが必要ですが、個人旅行では小規模な店舗も旅行客を受け入れることができ、新たなビジネスチャンスが生まれます。
弊社もすでに中国の個人向けバックパッカーサイトへの情報発信等を行っています。個人旅行の訪日リピーターは団体旅行と違い、主にネットやSNSなどで行き先の情報を収集します。日本の観光地、商品、サービスなどの魅力を情報発信することが重要です。
団体旅行とは行き先や食事、買い物などの行動が違う、これらの人々をターゲットにした集客・アピールをすることが、中国人個人旅行者の呼び込みにつながるのです。
出典:日経BPnet
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BK/032400008/?rt=nocnt