キーワードはマインドシェア!?コロナ禍でも止めない海外マーケティング

インバウンド旅行者回復の見通しが立たないことは世界各国でも同様ですが、それぞれコロナ禍でどのようなマーケティング活動及び旅行業界の支援活動を行っているのでしょうか。各国の課題や強みなどは異なりますが、日本としても参考になることがあると思います。

今回は世界各国のコロナ禍の海外(インバウンド)マーケティング活動をまとめてみました。

◇◆アメリカ

コロナ回復期に向けた海外マーケティング目標や方向性を様々定めているが、その中でも重点を置いているのが「旅行流通ネットワークの維持」、「継続的なアメリカの想起」となっています。「旅行流通ネットワークの維持」は主にアメリカ国内の旅行業界全体を支援しながら外国企業とのネットワーク維持や新規開拓を目的にしています。具体的には旅行業界向けオンライントレーニングプログラムの実施やオンラインのBtoB商談会の開催など。

「継続的なアメリカの想起」については、アメリカを旅行先として候補に入れてもらう為の情報発信活動が中心となり、具体例の一つとしては、Amazon FireやApple TV、Google Chromecast等のストリーミングデバイス向けに「Go USA TV」というアメリカ観光情報チャンネルなどがあります。

◇◆イギリス

イギリスはコロナ禍ではまず、国内向けの旅行需要を活性化する為のマーケティング活動を中心にしながら、中期的にはイギリスの魅力や安全性をプロモーションすることを目的に、適正なタイミングで海外向けマーケティングキャンペーンを実施していく方向です。具体的には観光業界と共同で、スポーツイベントで成果が見られたツアーバブルを進化・拡大しインバウンドグループツアーへの適用を目指すなど、ビジネス活動の為の短期滞在の特例等を研究・検討すること、となっています。

◇◆オーストラリア

オーストラリアでは、2020-2024の中期経営計画を策定し、アフターコロナの以下4つのゴールを設定し段階的な回復を目指しています。

1.観光消費額の減少を最小限に抑える

2.好意的なブランド力の維持

3.イベントのパイプラインの再構築

4.航空業界の回復の主導

また、「持続可能かつ競争力のある観光産業の育成と成長」を目標として掲げ、「オーストラリアを地球上で最も憧れを受け記憶に残るデスティネーションとする」というインパクトのあるビジョンを設定していることが印象的です。

◇◆香港

香港は、①観光業の支援と香港の継続的な国際的露出、➁可及的速やかに香港への観光客を戻す、③高収益セグメントの獲得、という3つのステージに分けて海外マーケティング活動を実施していく方向です。

特に、旅行業界に対する支援だけでなく、香港域内における(市民等の)観光業に対する機運を醸成する為に国際観光再開前から香港の国際的な露出を継続すること、またコロナ回復期には競合国との熾烈な競争が訪れると想定され為、香港が勝ち抜けるように大規模プロモーションの為のリソースを確保することを注力する内容として掲げています。

◇◆タイ

様々な国から観光に訪れる東南アジアのインバウンド大国タイですが、やはりコロナ禍で国内観光業は厳しい状況です。タイではアフターコロナに向けて、主には中国人旅行者(特に20歳から40歳までのデジタルに精通した個人旅行者)に重点を置いてマーケティング活動を行う予定です。

その為、「安全」というキーワードは大前提としながら、「Ctrip」、「Fliggy」など中国で人気の旅行サイトへの露出強化、「Alipay」のような支払いシステムへの対応などを加速させることを検討しています。

◇◆シンガポール

シンガポールは2021年の取り組みとして、国内市場向けには需要刺激策を、海外市場向けにはマインドシェアの維持を目的に取り組みを実施しています。

「マインドシェア」とは、一般的には、「顧客(消費者)の心の中に占める特定ブランドまたは企業の占有率」です。知名度シェアや購入意向率などがほぼ同義となります。

観光インバウンドマーケティングにおける「マインドシェア」とは、その国を想起させる活動を継続し、旅行先として選んでもらえるようにする為の活動、になると思います。

シンガポールとしては、インバウンドメインターゲットと設定した北米、イギリス、オーストラリア、インド、ドイツなどに向けて、バーチャル体験ツアーやインフルエンサーを活用したプロモーションを実施し、マインドシェアの維持に努めています。

◇◆モルディブ

国内人口を上回るほどの観光客が訪れるインド洋の島国モルディブ共和国では、コロナの影響でいくつかのリゾート島が島ごと封鎖されるなどの事態となりました。そんなモルディブのコロナ回復期に向けたユニークな施策を海外マーケティング番外編としてご紹介します。

モルディブとしては、今後の旅行はより高価になると予想し、インバウンド回復期のターゲットは、超富裕層とするのが理想的ではないかと考えているとのことです。

その理由として、

・プライベートジェットであれば、乗客は数名の為、到着時に空港のVIPラウンジで隔離しウイルス検査を実施することができる。

・モルディブでリゾートを経営するある施設では、プライベートジェットでのモルディブ旅行を求める人々からすでに複数の問い合わせを受けている。

・「ひとつの島にひとつのリゾート」が基本のモルディブは、ソーシャルディスタンスを具現化した最善の例といえる。

参考・抜粋:

主要国の観光局・DMOの観光施策最前線、コロナ禍で実践しているマーケティング事例を整理した―トラベルボイス調査レポート
https://www.travelvoice.jp/20210413-148555

新型コロナでツーリズムはどうなる?世界各国の現地報道から推測(前編)
https://www.cinra.co.jp/blog/tourism

◇◆まとめ

アフターコロナ、インバウンド回復期に向けての各国の海外マーケティング活動は様々ですが、日本にとって参考になる取り組みも多いです。その中でも、各国共通して重要視している、旅行先として選んでもらう為の「マインドシェア」の維持が一つのキーワードになっているのではないでしょうか。日本についても、観光の魅力、安全についての情報発信を継続することは当然として、競合国を意識したモルディブのような独自の強みを活かした、インパクトのある旅行商品の開発にも期待したいです。

著者:JOINT ONE 嶋田拓司